David Atamanchuk(陶芸家)ディビット・アタマンチャック


 黒と白の自然なコントラスの美しさ、自然釉に任せ、木炭とともに焼いて現れた景色の優しさ・・・ アタマンチャックさんの作品は、冗談交じりのひょうひょうとした語り口とは正反対に、床の間に置かれるにふさわしい東洋陶芸の伝統を踏襲した美しい表情をしている。カナダ出身の彼の手から生まれる形がどうしてこうも日本的なのだろうか。
バンクーバーの美術大学で、イギリスを代表する陶芸家で日本とも関わりの深い、バーナード・リーチを師に持つ先生に陶芸を教わった。カナダにおける陶芸は、芸術品ではなく、生活用品として教えられる傾向が強かったので、日本の「芸術や哲学と生活様式の融合としての芸術」と言う考え方に惹かれたという。
そして、運命の出会い。東洋陶磁史の権威である、三上次男氏のカナダでの公演を機に、日本で陶芸を学ぶことを決意した。青山学院大学に留学、一流のコレクションを誇る出光美術館で働きながら、日本、中国、朝鮮の陶芸史を吸収していったという。東京藝術大学では、初めての外国人研究生として、藤本能道教授、田村耕一教授(両氏とも人間国宝)のもと、作陶や絵付けの技術を学んだ。アトリエに並ぶ作品には李朝のかたち、桃山のかたち、と、正統な学びを背景にした、嫌みのない美しさと遊び心が感じられる。
網代へ移住したのは、芸術家の池田満寿夫と仕事をしたことがきっかけだった。池田満寿夫は晩年陶の作品を多く制作しているが、よき友として多くの時間を共にした。1986年に移住し、「楓釜」を開いた
チャレンジ!が信条のアタマンチャックさん、今回の挑戦は、大量の薪を何日も燃やし続ける、穴窯での作品作り。地元の人の支援を受けて、友人の陶芸家、佐藤さんと築釜した。ふたりの頭文字をとった「TD釜」は、ちょうど取材した今日が運命の窯出しの日。アタマンチャックさんは「うまくできるかな?」といたずらぽく笑った。

静岡県文化奨励賞受賞